November 26, 2005

シンガポール政府がDesignEDGEを開催

ポストITはデザイン・コンテンツ立国

※ このレポートは「週刊アスキー」11月22日発売号ニュースのための元原稿です

「かっこいい」クリエイティブが出来る若者のいる国を目指す

11月10日から12日まで、シンガポール政府のデザインおよびクリエイティブ産業推進機関であるデザインシンガポール主催による、クリエイティブショー「DesignEDGE」が都心にある見本市会場サンテックにおいて開催された。
「DesignEDGE」は、国内における若年層のクリエイティビティーの向上を目的に開催されたショーで世界11カ国より、38組のデジタルクリエーターがプレゼンテーションや展示、作品の販売を展開、アジア・オーストラリア全域から5000人の参加者を集めた。
ITを中心とする製造業から企画・開発中心の産業に構造が変わりつつあるシンガポールにおいて「競争力のあるコンテンツや魅力ある製品やビジネスモデルを作り出す上で、新しい世代によるクリエイティビティーの育成が急務である」(ミルトン・タン:デザインシンガポール・ディレクター)というコンセプトのもと、VJやグラフティ(落書き表現)などのストリートカルチャーや、デジタルグラフィックスなど、世界的にクールなものとよばれているシーンにおけるセレブレティーやフィギュアクリエーターなどを集めたイベントは、さながらただ見た目良いだけの表現から、世界で「かっこいい」と呼ばれる尖った表現へと若者を誘うことで、構造変化の上で勝ち抜く上で抜け落ちていたクリエイティビティーを急速に高めようとする、シンガポールならではの行政主導のムーブメントによるしたたかな戦略と感じられた。

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英国のヴィジュアルテクノロジーアーティストグループ”United Visual Artists”はVJと電子音楽によるコンサートを披露。クールなビジュアルパターンの間には日本風アスキーアートも。

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また、”United Visual Artists”は通信衛星の周波数帯をハッキングしたプレイも披露。

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ITにとても関心があるシンガポールの若者をひきつけたのはインタラクティブ展示。米国のインタラクティブ作家”FeedTank”によるカメラセンサーで反応するゲーム型の作品に興味津々。

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日本からはキャラクターデザイングループ「デビルロボッツ」が招待。東南アジアやヨーロッパで人気の彼らに何百人ものファンが常に殺到した。

デザイン力でアジア地域間競争に勝ち残る

「DesignEDGE」と同時に、シンガポールにおけるデザイン戦略を策定するための国際顧問団による初の戦略づくりの会合が行われ、液晶テレビ「アクオス」のデザインなどを手がける喜多俊之氏やアップル・マッキントッシュの登場を告げたCM「1984」を制作したスティーブ・ヘイデン氏など、ビッグネームが集まり、デザインによるシンガポールの競争力の向上について話し合われた。会合において喜多氏は「強い国際ブランドを持たないシンガポールにおいて、世界的なヒット商品を数年以内に作り出すことが、クリエイティブ立国にとって重要」であると提言、IT機器分野を中心にデザインによるブランド力を持ったシンガポールの顔となるプロダクトづくりが重要戦略として盛り込まれた。
構想よりも短期間にIT化の目標を実現したシンガポールにおいて、不得手ともいうべき世界で一番尖がった文化によるコンテンツやデザインの創造を同じく短期間に出来るのか。国家規模の新たな実験の推移が注目される。

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スティーブ・ヘイデン氏(一番右)、BMWのデザイン部門ディレクターのクリストファー・バングル氏(左から3人目)、建築家の伊藤豊雄氏(右から2人目)など錚々たるメンバーによるデザイン国際顧問団。「デザイン力を持ったシリコンプレーヤーを来年のミラノサローネに向けて披露する」と喜多氏(左から2人目)

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国際顧問団による即興デザイン披露会。左利きでも右利きでも快適に使えるデジタルカメラのお題に対し、3分でシンメトリーで前後から握れるデザインを英国のカリスマ工業デザイナーであるリチャード・シーモア氏が提案。

URL:
デザインシンガポール http://www.designsingapore.org/
デビルロボッツ http://www.devilrobots.com/
DELTA http://www.deltainc.nl/

文・写真=岡田智博 coolstates.com